住まいの提案、石川。

Side Story Speciality 02 「空間を創造する、オーダー家具の世界」

Side Story Speciality 02 「空間を創造する、オーダー家具の世界」

空間の軸となる家具をプロデュースしたり、ライフスタイルと響き合う庭をデザインしたり―。魅力的な住まいには、施主やビルダーと共鳴し、理想を叶えてくれる各分野のスペシャリストたちがいます。何を想い、どんな仕事をしているのでしょうか。スペシャリストたちの仕事をクローズアップし、家づくりにまつわる、もうひとつの物語をご紹介します。

最小限の構造線が「美しさ」と「強さ」を生み出す

ディテールにまでストーリー性をまとった家具

 ずっと昔から、そこにあったかのような空気感をまとうアームチェアとテーブル。長町武家屋敷跡にあるタイ料理店「海月が雲になる日」で、その家具は静かに客人を待ち受けている。手掛けたのは、FREY Designの家具デザイナー 甲斐 晋氏。店舗デザイン、建築設計などを行い、数々のデザイン賞を受賞している。

 「この店舗は歴史ある日本家屋なので、家具にも格子など和の意匠を取り入れました。とは言っても加賀藩の建物は群青壁などモダンさもあるので、和にふりきれてはいないんですよ」と甲斐氏。家具が空間のストーリー性に調和するよう、店名になっている海月(くらげ)の傘を意識してチェアの座面を丸くし、アームは触手のようなカーブを描く。材料は無垢材のブラックウォルナットで、構造は日本建築に使われる木組み技術のホゾ組み。甲斐氏自らがいくつもの部材を手作業で削り出し、組み立てている。一般的に重い無垢材の家具は壊れやすいが、フォルムのラインが構造的に強固になるよう計算されており、美しさと強さを併せ持つ家具を完成させている。

SUSUMU  KAI

甲斐 晋 FREY Design(フレイデザイン)/代表【PROFILE】オーダー家具職人・デザイナー・建築士。石川県金沢市出身。オーダー家具製造、店舗デザイン、建築設計、クラフトデザイン等を行う。2023年に「SOON  JAPAN  DESIGN  PROJECT」ARTISAN10名に選出。ディテールにまでストーリー性をまとった家具

俳優・ 岡 幸二郎氏の別荘では、築100年以上の古民家を改修。聚楽壁や無垢材、和紙、漆喰など100年前にもあった建築材料にこだわった。
タイ料理店「海月が雲になる日」は明治期の建築物。2階に配されたアームチェアは海月をモチーフにし、丸い座面は座った時の沈み加減まで計算されている。

地震に強い平屋住宅をトータルにデザインする

 静岡の木工製作所や大阪の家具メーカーで家具職人としての経験を積み、2004年にFREY Designを設立。その真摯な仕事ぶりと国際的な家具コンペティション「IFFT talents」に選出されるなどインテリアデザイナーとしての高い評価から、オーダーが絶えないという。現在は県外の大手メーカーと家具やプロダクトの開発に携わるなど活躍の幅を広げている。また、建築士としての顔も持つ甲斐氏は一般住宅の設計から店舗などのインテリアデザインも行なっている。

 「今、力を入れているのが暮らしやすい平屋住宅ですね。耐震性があって、実面積以上の広がりが感じられる建物が理想。リノベーションだけでなく、新築もお任せいただくようになってきました。無垢材だけでなく新素材を取り入れてフレキシブルなデザインをしています」 家具職人として腕を磨き、メーカーとの共同作業で多様なニーズにも応えてきた甲斐氏。使う人の好みはもちろん、バックボーンにまで深いまなざしを持つ彼だからこそ生み出せる唯一無二のデザインがあり、そこからまた新しい物語が紡がれていく。

唯一無二のインテリアが新しい物語を紡いでいく

階段の手すりは木材で、強度にも配慮。
洗面台も無垢材を使ったオリジナルの家具に。照明の色や角度もトータルにデザイン。
2階のベッドルーム(奥)は金沢伝統の群青壁。建具は間延びした印象にならないよう縦に細い木のラインを入れている。
建築設計では施主の暮らしや仕事を俯瞰し、使いやすく、広がりを感じさせる空間を創造。
建築設計をした新築のLDK。キッチンは国産の
山桜。
庭を取り込むように扉と吹き抜けの窓をガラスにし、広がりを演出。 
リノベーションの建築設計をした家。床、キッチンを無垢材にし、統一感がある。
カウンターはフォルムを工夫したデザイン。
料理に合うよう壁の一部をオリーブ色に。
空間設計をしたイタリアンレストラン。テーブルとベンチもオリジナル。

使い心地をデザインした家具たち


甲斐氏のデザインは「機能的な美しさ」が特長。空間や使う人の背景を考え尽くし、ものの意匠が凝らされている。
ソリッド
無垢材の山桜を使用したチェア。無駄な要素をそぎ落とし、シンプルかつ機能性を極めた。
ソファ
「海月が雲になる日」2019いしかわインテリアデザイン賞 大賞受賞。
swallowtail
「IFFT talents」デザイナー10名に選出された時に提案した
椅子。構造的に必要なフォルムのラインが装飾にもなっている。
ガネーシャ
wood design award 受賞

FREY Design
〒920-8221 金沢市佐奇森ル83
tel 076-255-7960
fax 076-255-7962
mail kaidesign@s3.dion.ne.jp
https://www.frey-furniture.com

VOL.13 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.12 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.11 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.10 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.9 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.8 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.7 住まいの提案、石川。 ¥300

住まいの提案、石川。特集記事一覧 特集記事一覧

備えあれば憂いなし Volume13特集記事

備えあれば憂いなし Volume13特集記事

構造計算でつくる地震に強い家―家づくりにおいて、“もしも”に備えた事前の準備。それは建てる前からはじまっている―。災害と隣り合わせの私たちが安心して暮らすために、ビルダーは日々、耐震性・耐久性の高い家を追求しています。石川県において、精度の高い構造計算により「安全」と「心地よい暮らし」を両立する家づくりをご紹介します。
実例集 「暮らすほどに愛着が高まる中庭を中心としたロの字型の家」樋爪住宅研究所

実例集 「暮らすほどに愛着が高まる中庭を中心としたロの字型の家」樋爪住宅研究所

吹き付け塗装を施した白壁が、シンプルでありながら、やわらかな印象を与えるN邸。樋爪住宅研究所が設計・施工を担当した住まいのポイントは、正面から見るよりも鳥の目になった方が分かりやすい。上からのぞくと、中庭をぐるりと囲んで、ロの字型に住空間がレイアウトされているのだ。
実例集 「家時間を楽しむ1階で暮らしが完結する家」建築工房正勝

実例集 「家時間を楽しむ1階で暮らしが完結する家」建築工房正勝

家づくりを進める上で、ビルダーと幾度となく打ち合わせを行い、間取りや仕様が決定し、いざ着工となると、もうそこから先はお任せとなってしまうことも多い。だが建築工房正勝での家づくりは、ここからがスタート。建築途中の現場で実際の生活を想像しながらその場で、棚の位置や施主の身長に合わせた造作家具の高さを決め、図面にはなかったところに新たに収納を設けた。
実例集 「海沿いの街で自然体に暮らせる住まい」KIRIKOBO桐工房 

実例集 「海沿いの街で自然体に暮らせる住まい」KIRIKOBO桐工房 

小さなころから住み慣れた海沿いの街で、自然体で暮らしたい。桐工房が手がけたT邸は、仕事から帰ったご夫婦が心からリラックスして過ごせるプライベートな住空間といえる。たとえば、幅広の白いガルバリウムに、木目の表情が豊かなレッドシダーを配した外観は、洗練されたシンプルさの中に温かみを感じさせる。
実例集 「現代のエッセンスを吹き込んだ町家リノベーション」LACLAS ラクラス

実例集 「現代のエッセンスを吹き込んだ町家リノベーション」LACLAS ラクラス

金沢市を中心に、住まいのかかりつけビルダーとして地域住民の家づくりに寄り添ってきたラクラス。新築はもちろんのこと、リノベーション分野の評価も高く、専門知識が必要とされる古い町家リノベーションにおいても多くの実績がある。
Side Story Speciality 02 「空間を創造する、オーダー家具の世界」

Side Story Speciality 02 「空間を創造する、オーダー家具の世界」

ずっと昔から、そこにあったかのような空気感をまとうアームチェアとテーブル。長町武家屋敷跡にあるタイ料理店「海月が雲になる日」で、その家具は静かに客人を待ち受けている。手掛けたのは、FREY Designの家具デザイナー 甲斐 晋氏。店舗デザイン、建築設計などを行い、数々のデザイン賞を受賞している。
食と空間 File.7「炉ばたとワインの酒場 nomo」

食と空間 File.7「炉ばたとワインの酒場 nomo」

小松駅から徒歩5分。「炉ばたとワインの酒場」の文字が印象的なのれんが揺れるのは築50年以上の古民家を改装して誕生した炉ばたとワインの酒場「nomo」(のも)。同じく小松駅近くにある人気店、ワインの酒場「mono」(もの)の二店舗目として2024年2月にオープンしたばかり。
この街で、心地いい暮らし Episode.7 – 小松市

この街で、心地いい暮らし Episode.7 – 小松市

2024年3月に北陸新幹線小松駅が開業した小松市は、暮らしに"ちょうどいいまち"として注目されています。その魅力について、市の移住定住・子育て支援の担当者に話を聞きました。小松市を一言でピーアールするなら、暮らしに”ちょうどいいまち“ですね。海や山が近く、自然やおいしい食材に恵まれ、買い物や遊び場も充分揃っています。
− 店舗兼用住宅 −「サロンと自宅。三角形はふたつ」空間デザインと照明計画で”非日常”を演出 asita – ディレクト

− 店舗兼用住宅 −「サロンと自宅。三角形はふたつ」空間デザインと照明計画で”非日常”を演出 asita – ディレクト

白山市の、とある住宅地。角地をとらえた航空写真が面白い。正方形の敷地に、長辺を向かい合わせるようにサイズの異なる三角形がたっている。ふたつ並んだ建物の正体を明かせば、小さい三角がプライベートサロン「asita」、大きい三角がご夫婦と二人のお子さんが暮らすIさんご一家の居住空間だ。
− 店舗兼用住宅 −「空き家をリノベ。ほっとやすらぐカフェに」仕事も、暮らしも”心地いい”を求めて CAFE BALMY – 大同建設

− 店舗兼用住宅 −「空き家をリノベ。ほっとやすらぐカフェに」仕事も、暮らしも”心地いい”を求めて CAFE BALMY – 大同建設

小松市役所から徒歩1分、火曜から金曜の昼だけ開く素敵なカフェがある。「CAFEBALMY」。店名の書かれた看板がなければ見落としてしまいそうな街中の隠れ家もまた、仕事と暮らしを両立した店舗併用住宅だ。
− 店舗兼用住宅 −「オンとオフ。暮らしにスイッチを」ライトグレーの外観が美しいサロンアンティーク家具が彩る癒しの空間 hair salon Eimmy – 樋爪住宅研究所

− 店舗兼用住宅 −「オンとオフ。暮らしにスイッチを」ライトグレーの外観が美しいサロンアンティーク家具が彩る癒しの空間 hair salon Eimmy – 樋爪住宅研究所

プライベートな時間を大切にしながら、仕事にも全力で熱意を傾ける。そんな理想の”職住一体“を実現する店舗併用住宅の上手な実践例が、金沢市田上本町のヘアサロン「Eimmy」だ。
無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

スペシャルリポート「木の彩」(KINOIRO)無垢の杉材に包まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋ガルバリウム屋根とレッドシダー木材をバランスよく配した外観。深みのあるカーキの吹き付け塗装の色調は、施主がもっともこだわったところ。