実例集 「現代のエッセンスを吹き込んだ町家リノベーション」LACLAS ラクラス
現 代のエッセンスを吹き込んだ町 家リノベーション
金工作家がプロデュースする、一棟貸しの家
金沢市を中心に、住まいのかかりつけビルダーとして地域住民の家づくりに寄り添ってきたラクラス。新築はもちろんのこと、リノベーション分野の評価も高く、専門知識が必要とされる古い町家リノベーションにおいても多くの実績がある。
金沢の街中は、今も昔ながらの建物が隣り合わせで並び、その古い町家が醸し出す雰囲気も魅力だが、一方で駐車場がない、狭い、冬寒いなどの理由で手放したいと考える住民も多く、空き家も増えてきている。そのような町家特有の悩みを抱えた物件のリノベーションを手がけ、家として新たな価値を創出するのが金工作家の竹俣勇壱さんだ。
「古い家屋を改修し、プロデュースすることに面白さを感じています。自分にとって家づくりは、実験でもあり挑戦の場。最初の頃は、資材もホームセンターで手に入れ、完全DIYもしていたのですが、やはり、専門家の目線が入っていなくて、加減がわからず完璧な仕上がりにはなりませんでした。そこで、不動産会社を通してラクラスを紹介していただき、断熱性や強度など、性能面での意見をもらい、また施工も信頼のおける職人肌の大工さんにお願いしています」と竹俣さん。
築100年以上の同物件では、再利用できる柱や梁、建具などは、修理してそのまま使用。補強が必要な箇所には新たに現代の建材を取り入れ、強度を上げている。ただ、古家は壁や床を解体してみないとわからないことも多く、竹俣さんも朝夕、毎日通い、判明したことに対してその場で設計施工の計画を考えていくスタイル。ひらめいた発想やイメージをビルダーと共有し、現場で決定していく。もし施工がイメージ通りでなければ、その場で大工に修正を伝えることもあるという。家づくりの現場は、工芸作家とビルダーがお互いしのぎを削る場のようだ。
町家空間に海外のアンティーク家具や手仕事の雑貨が心地よく映える。
シンプルで機能的なステンレスキッチンやIHコンロも備えている。
シンプルモダンな住空間にバスルームも新設
おそらく明治時代に建てられ、増築を重ねられた家は、建物そのものが歪み、隙間だらけだったというが、大壁という内側に柱や梁を壁内に隠す工法を用い、歪みを感じさせない造りに施工。さらに水回りやトイレスペースなど、不便さが残る部分は、前の家から、総とっかえを行い、間取りも大きく変貌した。
外観は伝統的な建物の趣を色濃く残しているが、一方で室内は明るい空気感にあふれ、とくに2階は、ホワイトでまとめられたモダンな住空間。その象徴ともいえるのが、階段上がってすぐ目の前に設置されたバスルームだ。古い町家では、そもそも浴室がない家もあり、新たに取り付けるとしてもシャワールームだけになる場合も多いが、「ゆったりと湯に浸かることは、日常生活で必要」と考え、バスルームの新設に着手。ビルダーと綿密に相談し、1階の柱や壁、天井を補強し、さらに排水を流すための配管パイプも1階リビングの天井下に通すことで2階バスルームを実現させた。その他にもベッドやハンガーラック、収納も設けるなど、日々、暮らすことを想定して家電や家具を設置している。
そして室内にさりげなく置かれた金属アイテムは、竹俣勇壱さん、デザイナーの猿山修さん、金沢の鉄工所によって共同制作されたプロダクトブランド「tayo」のもの。主張しすぎないシンプルなデザインが空間をさらに美しく引き立たせている。 町家が持つ独特の風情を残しつつ、令和の暮らしにもフィットするよう機能的にリノベーションされた一棟貸しの家。その建物からは「しっかりと機能を果たせるか、そこが責務」と話す、ビルダーの家づくりへの信念が伝わってくるようだ。
DATA
敷地面積 26.77㎡ 1階床面積 24.69㎡(7.46坪)
延床面積 41.38㎡ 2階床面積 16.69㎡(5.04坪)
◎工法/木造在来
◎基礎/不明
◎断熱材/不明
◎屋根材/瓦葺き
◎外壁材/杉下見板
◎内装材/1階:石膏ボード下地+EP、2階:石膏ボード下地+紙クロス
◎床材/ナラ複合フローリング鋸目
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VOL.13 住まいの提案、石川。 ¥300
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