住まいの提案、石川。

無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

スペシャルリポート「木の彩」(KINOIRO)
無垢の杉材に包まれて暮らす
家族とペットにやさしい平屋

ガルバリウム屋根とレッドシダー木材をバランスよく配した外観。深みのあるカーキの吹き付け塗装の色調は、施主がもっともこだわったところ。 ガレージは、オープン空間にすることで自由度が高く使える。スポットライトの光がほんのり照らす夕暮れの雰囲気もお気に入り。

玄関脇のシューズクロークにも扉をつけて雑然さを見せない。廊下から子ども部屋や夫婦の寝室につながる間取り。

ガレージ収納には、床一面に荷物を置くことがないよう、棚や壁付けでスッキリと整理。

すみずみまで暖かいワンフロアの住まい

 住まいにおいて”木“がもたらしてくれる効果。それは、ぬくもり、癒し、安心感などさまざまな言葉で形容されるが、住宅街の一画にある平屋建てのS邸は、”木”の利点を多く備え、なかでも杉の良さを最大限活かした家。長年、地元で大工・建築士として仕事し、今年、独立した木の彩(きのいろ)代表であるSさんが建てたコンセプトハウスとなる自邸だ。

玄関脇のシューズクロークにも扉をつけて雑然さを見せない。廊下から子ども部屋や夫婦の寝室につながる間取り。

天井の杉の木目が美しいLDK

 その家に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは、奥のリビングまで一直線につながる杉の無垢フローリングと天井。「杉は、視覚的にぬくもりを感じるというだけでなく、肌の熱を奪いにくい。素足で踏んだとき、足の感覚がヒヤッとならないのが特徴で真冬でもスリッパなしで過ごしています。また木材のなかでも柔らかく、ペットが走っても足が滑りません。化学物質を含まない素材は、ごろんと寝ころぶ暮らしにもおすすめです」と話す代表のSさん。針葉樹である杉は、表面は傷つきやすいが、Sさんはこの特徴こそ杉のおもしろさだと捉えている。経年変化によって増す色つや、生活しているうちにつく小さな傷は、家族の思い出、家の歴史として刻まれるものと考えているそうだ。

そして、杉のぬくもりだけでなく、ワンフロアの回遊動線とすることで、リビング扉を開放すれば、薪ストーブの輻射熱が廊下を通して各部屋にじんわり届き、どこにいても暖かく過ごせ、また個室にいても各々の気配を自然と感じられる間取りとなっている。

杉の一枚板ダイニングテーブルを造作し、ソファーは家具屋でオーダーで製作してもらった。ダイニングソファーは、空間を有効に使える。

経年変化を楽しむ杉材。床や天井に節あり、節なしなどさまざまな表情のものを使う。

愛猫たまちゃんがのんびりくつろぐ。冬の間は、薪ストーブの後ろが特等席。

リビング角にドブレ社の薪ストーブを設置。薪は仕事柄、廃材を手に入れやすく事欠かない。

回遊動線 の壁側に設けたクローゼット。木製スライドドアで目隠しし、生活感を出さない。

南側にとったサンルームには、扉を開ければリビングからも暖かい空気が届く。

ドレッサー付の洗面スペースは、廊下からの回遊動線の途中かつトイレから出てすぐの位置に配置することで手洗い場を兼用。幅を広くとることで背後もスムーズに通れる。

子ども部屋や夫婦の寝室も位置をあらかじめ決めて造作棚を設置。 すべての部屋を吊り戸にしたため床部分にレールがない。各個室の間には、幅広の廊下を挟むことでプライバシーを確保している。

美しさと暮らしやすさを共存クリーンを保つ設計アイディア

Sさんが建築士として掲げる﹁長く美しい住まいづくり﹂という設計コンセプトが貫かれているS邸。入居してから4年が経過しているというがどの空間も驚くほどクリーンに保たれている印象。これもプロ目線による工夫が随所に散りばめられているからだ。各部屋のドアを上吊り引き戸にし、床にレールを敷かないため、溝にゴミが溜まらず掃除もしやすい。廊下やリビングに作った収納スペースも扉で閉じてしまうことで雑然さを見せないようにする。床置きタイプの収納を作らず、棚は壁付けを基本とすることで、いつでもサッと床をふけ、また、家全体が段差のないフラットな空間のため、ロボット掃除機もスムーズに動けるなど、いつでも美しさをキープする工夫が施され、それが自然と日々の暮らしやすさにもつながってくる。

リビングから庭を望む憩いのひと時。

サンルームからウッドデッキへ出られる。軒からさらに窪みを作ることで、雨除けスペースを確保でき、薪置き場にもなる。植栽は、造園業を営む友人が造ってくれた。

そして、軒先をあえて深く作ることで躯体への日射を軽減し、雨風による外壁へのダメージを少なくするなど構造へも配慮し、また、水はねや湿気も心配な水回りは、圧密によって表面を硬くした杉材を用いて水染みを予防するなど適材適所での建材の使用は、これから長く暮らしていけばいくほど後々に差が出てくるポイントだろう。木とともに奏でていく家族の暮らし。時間を経たときこそ、その真価を実感するはずだ。

ビルダー情報

木の彩(KINOIRO)
〒929-1215 かほく市高松ノ63-2
tel 076-200-6321
https://kinoiro.net/

VOL.12 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.11 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.10 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.9 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.8 住まいの提案、石川。 ¥300

VOL.7 住まいの提案、石川。 ¥300

住まいの提案、石川。特集記事一覧 特集記事一覧

− 店舗兼用住宅 −「サロンと自宅。三角形はふたつ」空間デザインと照明計画で”非日常”を演出 asita – ディレクト

− 店舗兼用住宅 −「サロンと自宅。三角形はふたつ」空間デザインと照明計画で”非日常”を演出 asita – ディレクト

白山市の、とある住宅地。角地をとらえた航空写真が面白い。正方形の敷地に、長辺を向かい合わせるようにサイズの異なる三角形がたっている。ふたつ並んだ建物の正体を明かせば、小さい三角がプライベートサロン「asita」、大きい三角がご夫婦と二人のお子さんが暮らすIさんご一家の居住空間だ。
− 店舗兼用住宅 −「空き家をリノベ。ほっとやすらぐカフェに」仕事も、暮らしも”心地いい”を求めて CAFE BALMY – 大同建設

− 店舗兼用住宅 −「空き家をリノベ。ほっとやすらぐカフェに」仕事も、暮らしも”心地いい”を求めて CAFE BALMY – 大同建設

小松市役所から徒歩1分、火曜から金曜の昼だけ開く素敵なカフェがある。「CAFEBALMY」。店名の書かれた看板がなければ見落としてしまいそうな街中の隠れ家もまた、仕事と暮らしを両立した店舗併用住宅だ。
− 店舗兼用住宅 −「オンとオフ。暮らしにスイッチを」ライトグレーの外観が美しいサロンアンティーク家具が彩る癒しの空間 hair salon Eimmy – 樋爪住宅研究所

− 店舗兼用住宅 −「オンとオフ。暮らしにスイッチを」ライトグレーの外観が美しいサロンアンティーク家具が彩る癒しの空間 hair salon Eimmy – 樋爪住宅研究所

プライベートな時間を大切にしながら、仕事にも全力で熱意を傾ける。そんな理想の”職住一体“を実現する店舗併用住宅の上手な実践例が、金沢市田上本町のヘアサロン「Eimmy」だ。
無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

無垢の杉材に囲まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋「木の彩(KINOIRO)」

スペシャルリポート「木の彩」(KINOIRO)無垢の杉材に包まれて暮らす家族とペットにやさしい平屋ガルバリウム屋根とレッドシダー木材をバランスよく配した外観。深みのあるカーキの吹き付け塗装の色調は、施主がもっともこだわったところ。
スペシャルリポート「桐工房」

スペシャルリポート「桐工房」

スペシャルリポート「桐工房」将来を誓い合った若い二人は南の島のリゾートへ。子どもが産まれてからはにぎやかなテーマパークで一緒に遊ぶ。そして、育児がひと段落した後は文化の薫る街をぶらりと巡る。人生を歩んでいく中で、”旅“の目的地はどんどん変わっていく。同じように、家族構成や趣向の変化に合わせ、くらし方ももっと自由に楽しめたらいい。
この街で、心地いい暮らし Episode.6 – 羽咋市

この街で、心地いい暮らし Episode.6 – 羽咋市

豊かな自然に囲まれ、金沢へは車で約40分という立地から”ほどよい田舎暮らし“が楽しめる羽咋市。地域住民が交流しながらコミュニティを築く、未来志向のまちづくりについて市の移住定住担当者に聞きました。
食と空間 File.6 「欧風ビストロ GRIVE」

食と空間 File.6 「欧風ビストロ GRIVE」

JR小松駅すぐそばに佇むどこかレトロな雰囲気の欧風ビストロGRIVE(グリブ)。ナチュラルな暖かさを感じさせる優しい外観とは対照的に、一歩足を踏み入れると現れるのは、重厚な蔵の入り口。昭和7年に建てられた石蔵を、創作フレンチのレストランにリノベーションした。
癒やしの借景窓 〜外と中をつなぐ閉じない建築〜

癒やしの借景窓 〜外と中をつなぐ閉じない建築〜

どんな立地の住まいでも窓から望むことができる美しい景観が必ずある。郊外であれば緑が溢れる自然の風景住宅地であっても青い空と白い雲が見える。窓を緻密にデザインし外から中へと流れるよう...
食と空間 File.5-1 「Angolo CAFFE」

食と空間 File.5-1 「Angolo CAFFE」

金沢駅東口から徒歩10分ほど。ノスタルジックな雰囲気が魅力的な金沢市笠市町に佇むのは一つの町屋を改装したカフェ、創作イタリアンレストラン、ホテル、花屋が併設された複合施設。 築13...
食と空間 File.5-2 「ORIGO」

食と空間 File.5-2 「ORIGO」

金沢駅東口から徒歩10分ほど。ノスタルジックな雰囲気が魅力的な金沢市笠市町に佇むのは一つの町屋を改装したカフェ、創作イタリアンレストラン、ホテル、花屋が併設された複合施設。 築13...
この街で、心地いい暮らし Episode.5 – かほく市

この街で、心地いい暮らし Episode.5 – かほく市

「どの町に家を建てるか」は「どんな家を建てるか」と同じように、人生を左右する重要な選択です。石川県内の市町をクローズアップし、その魅力や暮らしやすさについてご紹介します。8年連続で人口が増加し、2022年には小学生の増加数が石川県内最多となるなど、”伸びざかりのまち“として注目されるかほく市。
たもたれる家-心地よく過ごせる家とはどんな家だろう-

たもたれる家-心地よく過ごせる家とはどんな家だろう-

家のどこにいても、気持ちのよい温度に保たれている家もそのひとつ。10年、20年と住み継がれても、丈夫に保たれている家もそのひとつ。日々の暮らしのなかで家族の安らぎと笑顔が保たれる家もそのひとつ。住み心地のよい家に求められる性能はいろいろあるけれど、家をよい状態で長く保ったり、どこにいても適温が保たれるために必要な性能について考えてみたい。