「戸井 建一郎」建築家が語る、住まいづくりの視点

ニュートラルな思想がつくるモダンスタイルの家
住む人の豊かな感情を生み出すデザインを提案
トイットデザインが得意とするのはモダンスタイル。クライアントの想いを解釈し、デザインと機能性や住心地を両立させて、具現化することが建築デザイナーとしての仕事だと考えています。

内灘町の白帆台に建つ住宅。北西側沿岸部に防風林がなく、高台から180°のオーシャンビューを 見渡せる立地環境を生かした開放的な2階LDKが印象的。幅13.5m、高さ3.3mの大開口を設け、 日本海の美しい自然と対峙する空間を構成。
住心地というと便利な設備、住宅性能、快適な住空間などがありますが、それは当然のこと。僕はそれにプラスして、家には住む人をワクワクさせるような感情を生み出すデザインが必要だと考えています。例えて言うとそれはレストランで美味しいものを食べた時の幸せな気分、アートや家具に出会った時のときめき、好きな洋服を着て街に出かけた時の高揚感などに近いものかもしれません。人間の五感が刺激を受けて、神経を伝達して心に伝わり、感情を乗せていくような感性的な部分を大事にしたいのです。そういった感情を生み出す空間や気持ちの良い空間に包まれることで、住む人の心も豊かになるのではないかと考えています。

プライベートテラスがリビングとシームレスにつながるリゾートホテルのような家。
施主の要望だった螺旋階段がモダンスタイルに溶け込んでいる。
対話の中でヒントを探り、デザインで答えを具現化
僕にとって建築デザインの仕事は、クライアントとの対話で作り上げていくプロセスが魅力。特に家は、人や人の暮らしと密接に関わるもの。さまざまな人の思考に対して思索を重ね、デザインで答えを出していくことが住宅設計の面白さだと感じています。時には難しいオーダーもありますが、対話の中でその真意を汲み取ることができれば、クライアントの理想とする生活スタイルが見えてきます。それを僕なりに解釈して、デザインとして提案します。
僕自身、クライアントからのオーダーによって固定観念から離れてトライすることができ、新しい発見や新しいかたちに反映できるプロセスを楽しんでいます。それまで自分にはなかった雰囲気のものにジャンプアップして、想像もつかない世界で結果を出す面白さを感じています。

ポジティブにとらえ、2階の生活空間に自然と融合する景観を生み出した。
自分の頭の中だけで考えていても生まれるアイデアは限られています。でも、クライアントの要望によって僕の中に異質なものが入ると違う回路が生まれます。いろいろな考え方に触れることで、発想や選択肢が広がります。ですから、とにかく何でも話していただきたいのです。僕自身がクライアントのオーダーとの化学反応を楽しんでいますから。


もし、真っ白なキャンバスに「好きなものを描いて」と言われたとしても僕には描けません。クライアントの要望や個性、住まいに対する夢やイマジネーションが、僕が住宅デザインをするうえでの大切なヒントになっているからです。

KENICHIRO TOI 戸井 建一郎
株式会社 トイットデザイン/代表取締役・一級建築士
【PROFILE】石川県小松市出身。金沢工業大学を卒業後、東京の設計事務所などを経て、1996年石川県にてTOI設計事務所を創業、2004年『株式会社トイットデザイン』として法人化。数多くの住宅や、商業空間、医療施設などの設計・監理を手がけている。洗練されたモダンスタイルに定評があり、2022年には、[第50回いしかわインテリアデザイン賞2022]において、最高位となる【大賞】を受賞。その他、受賞多数。
トイットデザイン
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