住まいの提案、石川。

たもたれる家-心地よく過ごせる家とはどんな家だろう-

たもたれる家-心地よく過ごせる家とはどんな家だろう-

家のどこにいても、気持ちのよい温度に保たれている家もそのひとつ。10年、20年と住み継がれても、丈夫に保たれている家もそのひとつ。日々の暮らしのなかで家族の安らぎと笑顔が保たれる家もそのひとつ。住み心地のよい家に求められる性能はいろいろあるけれど、家をよい状態で長く保ったり、どこにいても適温が保たれるために必要な性能について考えてみたい。

高気密な家がつくる、快適な暮らし

いい家の条件とは何でしょうか。立地、景観、デザイン、居心地、性能など、さまざまな視点で考える必要がありそうです。

今回は、読者の皆様の関心も高い「気密性」を軸に、気密測定技能者の福田健太郎さん、一級建築士事務所takeあーとの竹澤正臣さん・英里さんと快適な住まいづくりについて考えます。

一級建築士事務所 takeあーと(たけ)
竹澤 正臣さん 英里さん

快適・健康・エコな暮らしをかなえるために、自然を取り込むデザインと高断熱高気密にこだわる一級建築士事務所。気密測定は、中間と完成時の2回実施し、気密性能※C値0.3以下(完成時)を目標値としている。

株式会社 福田温熱空調
代表取締役 福田 健太郎さん

気密測定と気密断熱工事のプロフェッショナル。気密測定技能者として  県内外からの依頼に応えて年間400件を超える気密測定を行っている。「見つけた隙間は必ず埋めて帰る」をモットーに、気密を高めるためのサポートが県内外のビルダーから広く支持されている。

※C値とは建物全体の隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った数値。建物の気密性能の指標として用いられる。

気密性の高さは、いい家の条件

【Q】今、家を建てたいというお客様から、どのようなご要望が多いですか。

竹澤 takeあーとでは、「自然を取り込む家」「細部にこだわる家」「高気密高断熱の家」の3つをコンセプトとして家づくりをご提案しています。今はデザイン性だけでなく、性能も両立させる家を求めるお客様が多いですね。その中でも、高気密高断熱への関心は高いと感じています。

【Q】気密測定を行うのは、当初からのお考えでしたか。

竹澤 独立するにあたって、気密測定は必須事項だと考えていました。それで前職の頃からお付き合いのあった福田さんに測定をお願いしています。

福田 当社は、屋根裏遮熱材や換気システムを扱う会社です。しかし、それらを販売するだけで良いのだろうかという思いもあり、先代の頃から気密測定も行ってきた経緯があります。でも、お客様が求めておられるのは単なる測定数値ではなく、気密性の高い家。そこで、当社では気密測定に加えて、ビルダーさんの理解をいただきながら気密を高めるお手伝いもさせていただています。以前は今よりも気密に対する理解が少なく、依頼件数も年間200件に満たないほどでした。それが、今は年間400件を上回るほど県内外からご依頼をいただくようになっています。特にこの年ほどの間に気密性を重視されるお客様が増えてきた印象があります。

【Q】今は高気密な家がいい家の要素だと認識されているのですね。

福田 測定の際に施主様とお話する機会もあるのですが、私個人では女性の方が特に気密性に高い関心を持たれている印象があります。せっかく新しい家を建てるのに手足が冷えてしまうような家では困りますからね。

高気密の家は省エネで長寿命

【Q】気密性の高い家は、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

福田 一般的な家はおそらく皆さんが思っておられるよりも隙間が多いです。冬はその隙間から外の寒い空気が入ってくるので、家が冷え、体も冷えてしまいます。特にトイレや建物の角にある部屋は顕著です。気密を高めれば室内の温度差が少ない家になり、冬も温かく快適に過ごせます。エアコンの使用に関しても高気密高断熱の家は時間ゆるゆると運転させるだけで適温が保たれ、結果的に光熱費も低く抑えられます。また、表には見えなくても住宅の内部にはどうしても自然素材以外の物も使われていますから換気は必須です。

計画換気システムの付いた高気密住宅は、室内に良い空気を循環させるため、空気はいつもクリーンです。壁の中の結露(内部結露)に関しても、隙間があると室内との温度差により結露を発生させ、その部分から家が腐っていきます。高気密の家では内部結露は起きにくいので、家の長寿命化にもつながります。―年数が経った家の場合、外壁の補修は熱心にされているようですが、壁の内部までは難しいですよね。

福田 そうですね。ですから、最初に建てる時から最善を尽くしたいですね。

竹澤 一般的には外壁側に空気を流す通気工法が多いですが、最近では通気層を設けず外側に付加断熱することで、内部結露のリスクを抑えた工法もあります。いずれにしても大切なのは、結露を防ぐための仕様選びと、それを裏付ける丁寧な仕事です。家を建てる目的も大事にしたいことも人それぞれ違いますが、せっかく建てる家ですから、長く守っていくためにも気密性は欠かせない要素だと思いますね。

自然と調和しながらつくる性能の高い家

【Q】気密性のほかにも快適な家の条件があるかと思います。

竹澤 私たちはトータルで調和する家をつくることが大事だと考えており、その一つに気密性があるイメージです。

太陽の恵みや風の力を生かすパッシブデザインや、自然と調和するバイオフィリックデザインの考え方も大事にしたいですし、できるだけ自然素材を使って自然と調和した暮らしを描けるのが、快適な家ではないかと考えています。

【Q】どれか一つに偏りすぎないということですね。

竹澤 お客様にとって幸せな家を考えた時、それらすべてが必要なのではないかと考えています。その中でも気密性は目に見えない部分で家の快適性を保つ大切な要素なので、私たちは中間と完成時の2回、気密測定を行っています。目標数値は、C値0.3(※)の家です。先日、福田さんに計測していただいた現場では、いろいろなアドバイスをしていただいたおかげでC値0.2という超高気密住宅が完成しました。

【Q】気密を高めるためには、施工力も問われるのでしょうか。

福田 現場には大工さんはじめ、さまざまな業者さんがいらっしゃいます。当然、考え方もさまざまですが、きれいな現場は測定数値も良い傾向がありますね。現場のみなさんの意識の積み重ねが反映されているのではないでしょうか。私も測定だけではなく一緒に家づくりに参加させてもらう気持ちで、現場で隙間を見つけた場合は必ず埋めてから帰ります。お客様には少しでも気密性の高い家に住んでいただきたいですし、中間検査で改善点を見つけ出し、少しでも良くなるようにお手伝いすることがやりがいです。

竹澤 設計時には気密性を高められるよう窓の計画にも配慮しています。ただ、気密ばかりを考えるとつまらない家になってしまいます。その家での暮らしを幸せなものにするためには、窓から見える景色なども大事な要素です。そこに暮らす人が住みやすく、快適な家になるようにデザインと性能の両立が大事だと考えています。

いつまでも住み継がれる本物の家づくりを

【Q】最後に、これからの家づくりの視点を教えてください。

竹澤 人口減少社会の今、空き家が増えています。住宅が飽和状態にあるなかで、新築を建てる責任として今後は住み手にも環境にも配慮した家づくりが一層大切になります。家は建てて終わりではなく、お客様にとってはそこからが始まりです。これから家づくりをされる方にはデザイン性だけでなく「高気密高断熱」の大切さを理解していただいた上で、生涯にわたって性能が保たれる本物の家づくりをおすすめします。家は建てて終わりではなく、お客様にとってはそこからが始まりです。これから家づくりをされる方には生涯にわたって性能が保たれる本物の家づくりをご提案したいですね。

福田 高気密の家の良さがようやく浸透してきた気がしています。気密・断熱・換気は三位一体のものです。気密だけに偏らず、3つのバランスが優れた家が快適な暮らしへの第一歩だと思います。

快適な住まいの指標「気密」を極める

気密測定技能者
福田健太郎さん

快適な暮らしへの第一歩となる、住まいの気密性。その測定方法や数値の見方などについて、気密測定技能者の福田健太郎さんにお聞きしました。

Q.気密測定の測定方法とは?

A.まず、換気扇やレンジフード、給気口などの外に通じる穴を目貼りします。その後、気密測定器で5段階に圧力を上げながら室内を減圧します。隙間があれば外から室内に空気が入るため、入ってきた空気の量から家全体の隙間面積を算出し、その値を延べ床面積で割った数値がC値(1㎡あたりの隙間面積)となります。

Q.C値とは? C値が悪いとどうなる?

A.C値は1㎡あたりの隙間面積を表します。2.0㎠/㎡を超えると寒く感じやすくなります。C値が悪い(家の隙間が多い)と、意図しない隙間から空気が出入りしてしまうため、計画換気が行えません。また、家の中で結露を発生させやすくなり、壁の中で起こる壁体内結露を誘発するリスクも高まります。壁体内結露により断熱材や木材が腐食すると、それを好むシロアリを招き、結果として家の寿命が短くなる恐れがあります。

Q.測定するタイミングと測定結果からわかることとは?

A.気密測定は、通常2回の実施をお勧めしています。1回目の中間気密測定は壁や天井にボードを施工する前に行います。先行配管の施工後、できればユニットバスを入れる前の実施が望ましいです。2回目の完成気密測定は、家の完成後(クリーニング後)に実施します。中間気密測定は、まだ工事中の測定になりますので、問題点をその場で見つけ出し、改善できるのがメリットです。1回のみの測定をお考えの場合は、完成時よりも中間気密測定をお勧めします。気密測定によって、C値をはじめ家全体の隙間面積(αA)、隙間の質を表すn値(隙間風が入りやすい/入り難い)もわかります。

Q.一般的に「高気密」とされるC値の数値は?

A.完成気密測定でC値=0.5㎠/㎡以下の家であれば、高気密の良さを実感いただけると思います。

Q.気密測定値は経年変化する?

A.変化します。私の家は築7年でC値が0.3㎠ /㎡ほど悪くなっていました。1年で0.5㎠/㎡以上悪くなった家もあると聞きます。完成気密測定で0.3㎠/㎡あればそれ以上の気密はいらないという考えもありますが、これからはC値の上限を設けずに本気で高気密化に取り組む家づくりが大事だと考えています。

Q.気密測定を依頼するには?

A.施主様から直接のご依頼も承りますが、測定にはビルダー様のご理解とご協力が不可欠です。まずはビルダー様にご相談ください。

取材協力

一級建築士事務所 takeあーと
〒920-0966 金沢市城南1丁目15番37-2号
tel 076-204-6206 fax 076-255-6434

株式会社 福田温熱空調
〒924-0072 白山市千代野西5丁目7-6
tel 076-275-1270

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備えあれば憂いなし Volume13特集記事

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